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2010年2月19日 (金)

タックスヘイブン対策税制改正による税務調査への対応(3)

 KPMG税理士法人山田彰宏先生のタックスヘイブン対策税制改正セミナーでは、「租税負担率」の計算において次のような事例に留意して今後の税務調査に備えるべきと解説されていました。

1)オランダ子会社が連結納税を採用している場合の租税負担率は連結所得に対する税率か、単体所得に対する税率か?

2)米国子会社所有の孫会社株式を親会社に対して現物配当にて組織再編する場合に生じるキャピタルゲインを分母である所得に加算する必要性があるのか?

3)キャピタルロスが生じた場合、所得から減算できるか?

4)税務当局と納税者の交渉で決定されるガーンジー島の法人税は外国法人税に該当するのか?

 上記のうち、4)については内国法人のグループ各社が保有する船舶の元請保険業を営む目的で保険会社をガーンジー島に設立したケースでは、税務当局の主張を国税不服審判所は認めています。すなわち、ガーンジー島の法人税は外国法人税に該当せず、タックスヘイブン対策税制が適用されるとしています。
国税不服審判所平成18年8月14日裁決 裁決事例集No.72 463頁

 外国法人税に該当しない理由として次の3つを列挙しています。

1)ガーンジー島の所得税は極めて任意性の強い支出であり、また、発生の避けられない国際的二重課税の排除を目的とした外国税額控除制度の予定する外国法人税ではない

2)税率を納税者が選択し申請して承認を受けるものであり、納税者間の画一性(公平性)を維持するための強行性を維持するものであるといえず、我国の法人税に相当する税の範疇を逸脱したものである

3)納税者の納付選択はタックスヘイブン対策税制の適用回避以外に合理的理由がないと認められること、我国の租税本来の概念とは大きく乖離したもの、税負担を著しく害するものとして許されないものである

 また損害保険業を営む内国法人のキャプティブ保険子会社のケースでは高裁までは税務当局が勝訴しましたが、最高裁で昨年平成21年12月3日に納税者が逆転勝訴しました。(損保ジャパン事件)
最高裁判例要旨平成21年12月3日

 キャプティブ保険を業とする内国法人の外国子会社が英領チャネル諸島ガーンジー島で26%の税率を選択(0~30%の間で選択可能)して納付した外国法人税が租税負担率の計算上、分子の金額となる外国法人税に該当するかどうかについて当局と納税者が司法の場で争いました。

 平成19年10月25日の東京高裁の判例要旨は次のようになっています。

ガーンジー島の法人税について、

・納税者に係る選択を認める税制は一般の租税概念とはかけ離れた不自然なもの

・納税者とガーンジー島当局との合意により決定されるものであって、課税に関する納税者の選択裁量が広範に認められる租税と認めるほかない

・租税概念の基本である強行性、公平性ないし平等性と相容れないものである

・実質はタックスヘイブン対策税制の適用を回避させるというサービスの提供に対する対価ないし一定の負担としての性格を有するもの

 ゆえに、ガーンジー島の法人税を外国法人税と認めることは

・外国税額控除の可否がガーンジー島の税制に依存することになる

・租税回避を許容することになる

 以上の結果として、納税者間の平等ないし税制の中立性の維持が不可能になり、我国の財政主権が損なわれる。

 東京高裁はガーンジー島の法人税は外国法人税に該当しないとして納税者の請求を棄却しています。

 これに対して平成21年12月3日の最高裁の判例要旨は次のようになっています。

1 上記所得税は,ガーンジーがその課税権に基づき法令の定める一定の要件に該当するすべての者に課した金銭給付という性格を有する

2 上記所得税は,上記子会社の所得を課税標準として課された税である

3 上記所得税については,納税者が,納付後任意に還付請求をすること又は納付が猶予される期間を任意に定めることができるとはされていない

4 上記所得税は,税率が納税者と税務当局との合意により決定されるなど納税者の裁量が広いものではあるが,その税率の決定については税務当局の承認が必要とされている

5 上記子会社は,任意の選択により税負担を免れることができたのにあえて上記所得税の課税を選択したということはできない

 この裁判の原告納税者の弁護担当した鳥飼弁護士事務所から鳥飼総合法律事務所解説「最新税務裁判例」が公表されていますのでご参照いただければと思います。

 「租税とは?」「所得を課税標準として課税された外国税とは?」「法人税法施行令141条2項及び3項が同条1項の別段の定め(限定列挙説)なのか、解釈規定(例示列挙説)であるのか?」など、詳しく解説されています。

法人税法施行令第141条(外国法人税の範囲)

法第69条第1項(外国税額の控除)に規定する外国の法令により課される法人税に相当する税で政令で定めるものは、外国の法令に基づき外国又はその地方公共団体により法人の所得を課税標準として課される税(以下この款において「外国法人税」という。)とする。

2.外国又はその地方公共団体により課される次に掲げる税は、外国法人税に含まれるものとする。

1.超過利潤税その他法人の所得の特定の部分を課税標準として課される税
2.法人の所得又はその特定の部分を課税標準として課される税の附加税
3.法人の所得を課税標準として課される税と同一の税目に属する税で、法人の特定の所得につき、徴税上の便宜のため、所得に代えて収入金額その他これに準ずるものを課税標準として課されるもの
4.法人の特定の所得につき、所得を課税標準とする税に代え、法人の収入金額その他これに準ずるものを課税標準として課される税

3 外国又はその地方公共団体により課される次に掲げる税は、外国法人税に含まれないものとする。

1.税を納付する者が、当該税の納付後、任意にその金額の全部又は一部の還付を請求することができる税
2.税の納付が猶予される期間を、その税の納付をすることとなる者が任意に定めることができる税
3.外国法人税に附帯して課される附帯税に相当する税その他これに類する税

 世界各国では様々な制度の下で所得に対する課税が行われますので、租税負担率の計算については今後の改正を十分考慮して税務調査に備えるべきと考えます。思わぬ勘違いで多額の追徴課税を受けることのないよう税務担当者の方は注意してください。 

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